アイルランド留学と貿易のニチアイブログ

アイルランドで留学と貿易を続けて20年あまり、ニチアイの現地在住スタッフがコーク市からお届けする、アイルランド情報ブログ。 現地在住エージェントならではのニュースを発信します。

2011-01

★ ニチアイについて ★
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廃線になったかつての愛英連絡鉄道

これは多分、アイルランドの普通の国民にとって特段の関心はなかった、国内でも小さなローカルニュースです。2010年9月18日の土曜日を最後として、南東部を走る鉄道路線、ウォーターフォードとロスレア・ストランドの間(約56km)が、実質廃止されてしまいました。表向きは休止らしいですが、恐らく二度と復活することはないでしょう。

この路線の晩年の姿はまことにわびしいもので、列車本数はなんと、平日に1往復、日曜祝日はゼロ、という、究極のローカル線でした。そして、年間の運行経費190万ユーロに対して、運賃収入はわずか5万ユーロだったとのこと。この数字だけをみると、もっと早いうちに廃止されていそうなものですが、それにもかかわらず、今日まで生き延びてきたのには、いくつかの理由があります。

この路線は、今日でこそ寂れ切っていましたが、飛行機以前の時代は、アイルランド南部一帯と、ロンドンを含むイングランド南部とを結ぶ、ある意味での幹線鉄道だったのです。そのため、確か2000年代初頭ぐらいまでは、コークやリムリック、トラリーなどを夕方に出て、ロスレア港に夜に着き、夜行フェリーを介して午前2時すぎにイギリス側の港に着き、待ち受ける列車に乗り継ぐと、朝にロンドンに着ける、という、そういう長距離客に合わせた運行ダイヤになっていました。逆は、ロンドンを朝に出て、午後のフェリーを介して、リムリックやコークには深夜に着くというダイヤでした。しかし、今回廃止になった区間に関しては、ウォーターフォードが最大の町で、そのウォーターフォードへの通勤通学客のために、それと別に、朝にロスレア港を出てウォーターフォードまでの列車がもう1本ありました。その列車は、夜行フェリーからの乗り継ぎ客も利用できましたが、ウォーターフォードから先へ行く列車の連絡はありませんでした。

という具合に、愛英連絡国際鉄道路線の一部を構成していたため、色々な意味で安易な廃止はできず、生き残ってきたのですが、実際にはもうその当時、この鉄道とフェリーを利用してイギリスへ渡る旅客は、限りなくゼロに近かったようです。そのため、2000年代に入って、ウォーターフォードを境に運転系統を分けて、ウォーターフォードとロスレア港の間は、ウォーターフォードへの通勤通学客のための1往復だけになっていました。つまり、フェリー連絡の長距離客への便宜は考慮せず、地元ローカルの輸送だけに徹するという転換です。

しかし、廃止になった途中区間には4つの駅がありましたが、どこも小さな集落で、多くの利用者は見込めません。こうなればもうバス代替は当然、と思われるでしょうが、これまた、そう簡単に行かないもう一つの事情がありました。それがこの長大鉄橋です。

Waterford - Campile

これは、ウォーターフォードの東側で、シュア川とバロー川が大河となって海へ注ぐ手前にあります。ここに、この路線の鉄橋が架かっています。とても長い鉄橋で、老朽化していたのでしょうか、そこを列車は、徐行でそろりそろりと、かなりの時間をかけて渡っていました。平凡な風景の多いアイルランドの鉄道旅行では、間違いなく一つのハイライトとなる雄大な眺めでした。この鉄道橋より下流はおろか、上流にも、道路の橋は全くなく、バロー川の東側からウォーターフォードへ車で行こうと思うと、延々、30キロ以上も上流のニューロスまでぐるりと迂回しなければなりません。現に、鉄道が廃止された翌週から、ニューロス経由の代替バスが走っていますが、ウォーターフォードまでの所要時間は、場所によっては以前の3倍ぐらいになってしまいました。この鉄道は、沿線からこの地域の中心都市であるウォーターフォードへ、最短距離で行ける便利な移動手段であったはずなのです。しかし、沿線人口があまりに少なすぎるので、車社会の今日、利用者はごく一握りの限られた通勤通学客しかなかったというわけです。

この、悲しいまでに寂れ切ったローカル鉄道の雰囲気が何とも言えず、といって、このダイヤでは乗りたくても乗れないので、昨年6月、ウォーターフォードへ用事があって行った時、夕方にウォーターフォードを出るロスレア行きの列車の時間に合わせて、ここに行ってみたのです。ウォーターフォード市街から車で15分ほどで行けます。以前にもそういう事を何度かやったことがあります。しかしその時、まさかこれが最後の機会になるとは思っていませんでした。

ところで、人気番組「世界の車窓から」のアイルランド編では、なんとこのルートが行程に入っているのですね。ここまで少ない運転本数の不便な路線を、よく入れられたものだと思います。しかしそれもまた結果的には、最後の貴重な映像になってしまったというわけですね。

鵜飼

テーマ:アイルランド - ジャンル:海外情報

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