コロナ長期休校でも語学学校は何故潰れないか
コロナウィルスが世界的に広がり、欧米でロックダウンが始まったのは、3月ぐらいです。それからしばらくして、イギリス、アイルランド、カナダなど、いくつかの語学学校閉校のニュースがありました。これからも続々と来るかなと身構えていたのですが、以後はそういうニュースは聞かなくなりました。語学学校は、小売業や飲食業以上にロックダウンの影響を大きく受けています。しかも学校の校舎がある場所の多くはその都市の一等地。ビジネスを常に回転させていかないと厳しいはずです。それでも多くの学校が潰れずに持ちこたえており、近々の再開校に備えています。
ちょっと刺激的な変なタイトルにしてしまいましたが、アイルランドについて具体例を挙げながら、このテーマを取り上げてみたいと思います。

アイルランド政府認可校の大多数が加盟している、MEI(Marketing English in Ireland)という業界団体のサイトに7月3日に掲載された記事によれば、2020年の語学学校業界の収入は、前年比80%減という予測だそうです。そして、その窮状を伝え、政府のさらなる支援を訴える内容となっています。業界向けの記事ではありますが、一般の方も問題なく読めますので、興味がある方は英語読解を兼ねて挑戦してみて下さい。
MEIのサイト http://mei.ie/
人口500万弱、GDP3500億ユーロのアイルランドにおいて、語学学校業界の貢献度は、直接的な数字としては特に大きくありません。年間学生数15万人、経済効果は少なく見積もって880万ユーロ、雇用面ではフルタイム3000人、パートタイム7000人、加えて約3万世帯のホストファミリー、といったところだそうです。これらの数字は語学学校が直接生み出すものだけなのか、関連産業(観光、飲食、交通機関など)も含めてかは不明ですが、いずれにせよ、関連産業を含めれば、それなりの経済貢献をしていることは疑いありません。
MEIの最近の記事では、そういった所の説明から始まって、それがどのような危機に瀕しているか、放置するとどうなるのか、どういった対策が必要か、など、具体的に記述されています。
はっきり言えば、今、多くの語学学校で、現金はかなり枯渇していると思います。しかし、学校が再開され、新たな入金があれば、また回り出すでしょうし、それで何とか危機を乗り切るべく、ほとんどの学校が踏ん張っています。今はおそらくまだそういう希望が持てる段階です。
コロナの初期に閉校した学校は、もともとそれ以前から経営その他問題のあった所とか、経営者が引退のタイミングを考えていた学校などで、コロナだけが原因ではないと思います。そういう少数の例外を除けば、4ヶ月近い閉鎖でも持ちこたえているわけです。個々の学校の内情まではわかりませんが、一般的に言えば、倒産レベルではない、ということです。

しかし、問題はこれからです。やっと再開が決まったので、危機のピークは過ぎた、と思われますか?MEIの記事を読んでも、そう言い切れない事情が見えてきます。だからこそ、これからが正念場、政府はもう一歩踏み込んで長期的な財政支援等を考えてほしい、と言っているわけです。
再開が決まりかけている今のタイミングなのに、何故これからの方が危ないのか、色々な理由を箇条書きにしてみます。
・休業中は一時解雇するスタッフの人件費補償を始め、多くの政府補助があったが、再開するとそれらの多くがなくなる。
・語学学校は前払い業界なので、授業その他が止まっても通常数ヶ月分の回転資金はある。それがそろそろ尽きる。
・語学学校の多くは春から夏、とりわけ夏のジュニアを最大の収益源としているが、今年はその部分がほぼゼロ。
・語学学校の年間サイクルでは、春から夏に稼いで秋以降にイヴェント参加などマーケティングにお金を使うが、今年はそのマーケティング予算が残っていない。
・再開しても以前の学生数がすぐに戻ってくるわけではない。
・ソーシャルディスタンスその他のコロナによる新たな規則(再開の条件)によって、保健衛生面での追加コストがかかったり、教室のクラス定員を減らさないといけなかったりする。
・オンラインレッスンを導入した学校の一部は、(本国に帰国して受講している学生もいるので)教室での授業を再開してもオンラインもすぐにやめられず、結果的に二重の手間と出費になる。
他にも細かいことは色々あるでしょうが、こうしてみると、生き残る学校、危ない学校というのも何となく見えてきます。また、当社は休業中も色々な学校の色々な立場のスタッフとメールでやりとりはしており、一部で本音や裏話も聞けましたので、それらの感触も含めていくつか書いてみます。ただ、個々の内情まではわかりませんから、以下は鵜呑みになさらないで下さい。
・家族経営の小~中規模校で、校舎も賃貸でなく所有で、さっと閉校してオンラインレッスンもやらず、経営者ファミリーメンバー以外の先生やスタッフは全て一時解雇しておとなしくしていた学校は、この危機に対して意外と強そうです。
・特にダブリンに多い、狭い校舎に定員いっぱい詰め込んでブラジル人など就労目当ての学生を集めて常に満員で回していた格安校は、いくつか倒産や廃業になるでしょう。
・歴史と伝統のある中堅以上のしっかりした学校は、多くがギリギリのところで踏みとどまって、数年かけてリカバリーすると思います。こういう学校は概して社会的信用も高いので一時的な融資も受けられやすい筈です。
・国際展開しているチェーン校は、もともとの授業料が高いし(口の悪い人がぼったくりというレベル)、不採算校の閉鎖などで全体組織として乗り切れるので、潰れることはないでしょう。

最後にオンラインレッスンですが、前の記事にも書いたように、オンラインレッスンをやる以上はそこでまた少しでも収益を上げようと必死でマーケティングしてきた学校がいくつかあります。割合としてはさほど多くありません。当社も一時、何とか売ろう、というか、売るべきかと悩んで、少し宣伝してみましたが、やはり結局無理でした。既に現地にいて学校閉鎖となり仕方なく受けた日本人留学生の複数の方から感想を聞きましたが、皆さん大体、こんなコメントです。
・最初はシステムも内容もひどかった
・徐々に改善されて先生も慣れてきて、一応勉強はできた
・新たにお金を払ってまで続けたいとは思わない
オンラインを中途半端にやって学校としての評判をむしろ落としてしまった所もありそうなのは、やむを得なかったとはいえ、残念ですね。あとは、経営者の方針か営業スタッフ個々の資質の問題ですが、オンラインの宣伝を派手にしてきた学校は、何というか、二枚舌で、当社のようなエージェントにもあまり良い印象を持たれず、長い目で見て損した所も多いのではないでしょうか。いや、そういうその時々の宣伝文句に乗せられてしまう人も多いから、それでいいのかな、という気もしますが、これは受け取る側も千差万別なので、何が正解かはわかりませんね。とはいえ当社としては、いつ教室での授業が再開するのか、以外のことは大して興味がないのに、頻繁にオンラインコースのニュースレターを、いい事ばかり書いて送ってくるようなタイプの学校には、概して良い印象は持てませんでした。
ちょっと刺激的な変なタイトルにしてしまいましたが、アイルランドについて具体例を挙げながら、このテーマを取り上げてみたいと思います。

アイルランド政府認可校の大多数が加盟している、MEI(Marketing English in Ireland)という業界団体のサイトに7月3日に掲載された記事によれば、2020年の語学学校業界の収入は、前年比80%減という予測だそうです。そして、その窮状を伝え、政府のさらなる支援を訴える内容となっています。業界向けの記事ではありますが、一般の方も問題なく読めますので、興味がある方は英語読解を兼ねて挑戦してみて下さい。
MEIのサイト http://mei.ie/
人口500万弱、GDP3500億ユーロのアイルランドにおいて、語学学校業界の貢献度は、直接的な数字としては特に大きくありません。年間学生数15万人、経済効果は少なく見積もって880万ユーロ、雇用面ではフルタイム3000人、パートタイム7000人、加えて約3万世帯のホストファミリー、といったところだそうです。これらの数字は語学学校が直接生み出すものだけなのか、関連産業(観光、飲食、交通機関など)も含めてかは不明ですが、いずれにせよ、関連産業を含めれば、それなりの経済貢献をしていることは疑いありません。
MEIの最近の記事では、そういった所の説明から始まって、それがどのような危機に瀕しているか、放置するとどうなるのか、どういった対策が必要か、など、具体的に記述されています。
はっきり言えば、今、多くの語学学校で、現金はかなり枯渇していると思います。しかし、学校が再開され、新たな入金があれば、また回り出すでしょうし、それで何とか危機を乗り切るべく、ほとんどの学校が踏ん張っています。今はおそらくまだそういう希望が持てる段階です。
コロナの初期に閉校した学校は、もともとそれ以前から経営その他問題のあった所とか、経営者が引退のタイミングを考えていた学校などで、コロナだけが原因ではないと思います。そういう少数の例外を除けば、4ヶ月近い閉鎖でも持ちこたえているわけです。個々の学校の内情まではわかりませんが、一般的に言えば、倒産レベルではない、ということです。

しかし、問題はこれからです。やっと再開が決まったので、危機のピークは過ぎた、と思われますか?MEIの記事を読んでも、そう言い切れない事情が見えてきます。だからこそ、これからが正念場、政府はもう一歩踏み込んで長期的な財政支援等を考えてほしい、と言っているわけです。
再開が決まりかけている今のタイミングなのに、何故これからの方が危ないのか、色々な理由を箇条書きにしてみます。
・休業中は一時解雇するスタッフの人件費補償を始め、多くの政府補助があったが、再開するとそれらの多くがなくなる。
・語学学校は前払い業界なので、授業その他が止まっても通常数ヶ月分の回転資金はある。それがそろそろ尽きる。
・語学学校の多くは春から夏、とりわけ夏のジュニアを最大の収益源としているが、今年はその部分がほぼゼロ。
・語学学校の年間サイクルでは、春から夏に稼いで秋以降にイヴェント参加などマーケティングにお金を使うが、今年はそのマーケティング予算が残っていない。
・再開しても以前の学生数がすぐに戻ってくるわけではない。
・ソーシャルディスタンスその他のコロナによる新たな規則(再開の条件)によって、保健衛生面での追加コストがかかったり、教室のクラス定員を減らさないといけなかったりする。
・オンラインレッスンを導入した学校の一部は、(本国に帰国して受講している学生もいるので)教室での授業を再開してもオンラインもすぐにやめられず、結果的に二重の手間と出費になる。
他にも細かいことは色々あるでしょうが、こうしてみると、生き残る学校、危ない学校というのも何となく見えてきます。また、当社は休業中も色々な学校の色々な立場のスタッフとメールでやりとりはしており、一部で本音や裏話も聞けましたので、それらの感触も含めていくつか書いてみます。ただ、個々の内情まではわかりませんから、以下は鵜呑みになさらないで下さい。
・家族経営の小~中規模校で、校舎も賃貸でなく所有で、さっと閉校してオンラインレッスンもやらず、経営者ファミリーメンバー以外の先生やスタッフは全て一時解雇しておとなしくしていた学校は、この危機に対して意外と強そうです。
・特にダブリンに多い、狭い校舎に定員いっぱい詰め込んでブラジル人など就労目当ての学生を集めて常に満員で回していた格安校は、いくつか倒産や廃業になるでしょう。
・歴史と伝統のある中堅以上のしっかりした学校は、多くがギリギリのところで踏みとどまって、数年かけてリカバリーすると思います。こういう学校は概して社会的信用も高いので一時的な融資も受けられやすい筈です。
・国際展開しているチェーン校は、もともとの授業料が高いし(口の悪い人がぼったくりというレベル)、不採算校の閉鎖などで全体組織として乗り切れるので、潰れることはないでしょう。

最後にオンラインレッスンですが、前の記事にも書いたように、オンラインレッスンをやる以上はそこでまた少しでも収益を上げようと必死でマーケティングしてきた学校がいくつかあります。割合としてはさほど多くありません。当社も一時、何とか売ろう、というか、売るべきかと悩んで、少し宣伝してみましたが、やはり結局無理でした。既に現地にいて学校閉鎖となり仕方なく受けた日本人留学生の複数の方から感想を聞きましたが、皆さん大体、こんなコメントです。
・最初はシステムも内容もひどかった
・徐々に改善されて先生も慣れてきて、一応勉強はできた
・新たにお金を払ってまで続けたいとは思わない
オンラインを中途半端にやって学校としての評判をむしろ落としてしまった所もありそうなのは、やむを得なかったとはいえ、残念ですね。あとは、経営者の方針か営業スタッフ個々の資質の問題ですが、オンラインの宣伝を派手にしてきた学校は、何というか、二枚舌で、当社のようなエージェントにもあまり良い印象を持たれず、長い目で見て損した所も多いのではないでしょうか。いや、そういうその時々の宣伝文句に乗せられてしまう人も多いから、それでいいのかな、という気もしますが、これは受け取る側も千差万別なので、何が正解かはわかりませんね。とはいえ当社としては、いつ教室での授業が再開するのか、以外のことは大して興味がないのに、頻繁にオンラインコースのニュースレターを、いい事ばかり書いて送ってくるようなタイプの学校には、概して良い印象は持てませんでした。
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